「日本のマウンテンバイクは今日から始まる」 山本幸平選手がテストイベントで見いだした光明

レース後に見せた晴れやかな表情の理由

観客の声援を受けてゴールする山本幸平選手
観客の声援を受けてゴールする山本幸平選手観客の声援を受けてゴールする山本幸平選手

マウンテンバイクの全日本王者になること実に11度、オリンピックも2008年の北京大会から3回連続で出場と、現在34歳の山本幸平選手は日本で圧倒的な実力と実績を誇っています。しかし、オリンピックではリオデジャネイロ大会の21位が最高と、世界を舞台にはまだ結果を残せずにいます。2019年10月6日(日)に、東京2020オリンピックの会場となる伊豆MTBコースで行われたテストイベント「READY STEADY TOKYO-自転車競技(マウンテンバイク)」でも、トップと8分38秒差の35位(1時間25分26秒)に終わりました。

それでも、レース後の山本選手の表情は晴れやかでした。

「最後まで走り切るというのが今回の目標だったので、それは達成できました。コースはハードですね。急勾配の上りがたくさんあるし、それが終わったと思ったら下りのセクションが入ってくる。1つ間違えると大転倒につながるコースになっています。休むところがないという印象です。さらに本番は蒸し暑さも加わってくるので、相当タフなレースになるかなと思います。ただ、そんな中でも今日できることを最後までやり切り、自分なりに感じた部分もあるので、それを持ち帰って練習方法を考えていきたいと思いました」

35位に終わったものの、本番のコースを体感できたことに手応えをつかんだようです
35位に終わったものの、本番のコースを体感できたことに手応えをつかんだようです35位に終わったものの、本番のコースを体感できたことに手応えをつかんだようです

山本選手がすがすがしい表情を見せたのは、本番のコースを体感し、手応えをつかんだからだけではありません。このイベントには静岡県が事前に募集した観客が多く集まり、実際に競技を生で観戦していました。それが山本選手にとってはうれしかったのです。

「日本に自転車文化は伝わりやすい」

「日本のマウンテンバイクは今日から始まったと、僕は思うんです。この競技における世界レベルのレースは、今まで一度も日本では行われていなかった。今はインターネットの時代なので、海外のレースを映像で見ることはできますが、世界の走りを生で多くの人が見たのは今日が初めてだと思います。ここから日本のマウンテンバイクシーンが変わっていくと僕は信じています」

今回のテストイベントでは「天城越え」「浄蓮の滝」「わさび」といった伊豆にちなんだ名前が岩場や上り坂などにつけられており、そこを駆け抜けていくトップライダーの走りは、各所の美しい眺望と相まって、実に迫力あるものでした。クロスカントリーという自然の中での戦いに、自らの限界を超えて挑む姿は、見るものを圧倒させます。観客からも多くの歓声が上がっていました。

「浄蓮の滝」を通過する山本選手
「浄蓮の滝」を通過する山本選手「浄蓮の滝」を通過する山本選手
急勾配の上りも数多くあるハードなコース
急勾配の上りも数多くあるハードなコース急勾配の上りも数多くあるハードなコース

しかし、こうした競技の魅力が、日本国内ではほとんど伝わっていないのも事実。それは「見る環境」「やる環境」が整っていないからでもあるでしょう。現在は長野県松本市に拠点を置いている山本選手ですが、過去10年ほどは海外で活動を続けていました。もちろん海外に出ることで競技者として、人間として成長する目的もありましたが、日本では練習できる環境が限られていることも理由の1つとして挙げられます。だからこそ、山本選手は自らが発信することで、そうした環境を変えていきたいと考えています。

「少しずつでいいので、マウンテンバイクに乗れる環境を整えていきたいというのが今の僕の願いです。現状では公式に練習できるところは限られている。そうした問題を解決していくことで、マウンテンバイクを楽しめる人が増えてくると思うんです。小さいころに何に乗るかと言ったらやっぱり自転車ですよね。世界を見渡してもこんなに自転車に乗る人種はいないので、日本に自転車文化は伝わりやすいと思います。だから僕が成績を出すことで何かを変えていければいいなと考えています」

競技を続ける原動力は「夢があるから」

競技を続ける原動力は「世界トップ10に入る夢があるから」
競技を続ける原動力は「世界トップ10に入る夢があるから」競技を続ける原動力は「世界トップ10に入る夢があるから」

東京2020大会に出場できれば、山本選手にとってオリンピックは4度目になります。そのため出場するだけではもはや「満足できない」と言います。求めるのは結果です。

「本当はリオで競技をやめようと思っていました。なんでやろうと思ったのかと言うと、リオの閉会式を生で見て、ブラジルの空気から東京のシーンに変わったときの雰囲気に、鳥肌が立ったからなんです。自分の生まれた国でオリンピックが行われるのであれば、トライするしか道はないなと。ヨーロッパやアメリカ大陸の選手は時差もあるし、大移動が苦手な人が多い。自国開催という武器を生かして、メダルとは言えないですけれど、入賞は本当に狙えると思っています」

マウンテンバイクという競技が盛んではない日本の第一人者として、世界で長年戦ってきた山本選手。34歳になりながらもその情熱が衰えることはありません。競技を続ける原動力は何なのでしょうか。

「夢があるからですかね。ずっと世界でトップ10に入りたいという夢があって、世界を求めてやり続ける環境があったから、ここまでやってくることができたのかなと思います」

マウンテンバイク競技が行われる2020年7月27日(月)、多くの人が再び世界のトップライダーの走りを目にすることになります。もしその戦いに山本選手が挑むことになれば、日本のマウンテンバイク界に新たな歴史が刻まれることでしょう。

「入賞は本当に狙えると思っています」と語る山本選手
「入賞は本当に狙えると思っています」と語る山本選手「入賞は本当に狙えると思っています」と語る山本選手

自転車競技について

1周4キロメートル~6キロメートルの未舗装の山道を走るマウンテンバイク種目(クロスカントリー)は、コースにさまざまな表情があり、体力と技術でいかにコースを征服するかが見どころ。

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