第一人者・長迫吉拓選手がBMXレーシングの可能性を広げる!「自分が発信すれば何か変わるかもしれない」

オリンピックに出場した日本人選手は過去2人

BMXレーシングでリオ2016オリンピックに出場した経験を持つ長迫吉拓選手
BMXレーシングでリオ2016オリンピックに出場した経験を持つ長迫吉拓選手BMXレーシングでリオ2016オリンピックに出場した経験を持つ長迫吉拓選手

北京2008オリンピックから正式種目となったBMXレーシングで、これまでこの舞台にたどり着いた日本人選手は2人しかいません。その1人が現在26歳の長迫吉拓選手です。長迫選手はリオデジャネイロ2016オリンピックに出場(もう1人は北京2008オリンピックに出場した阪本章史選手)。「当時は出場するだけでいっぱいいっぱいだった」こともあり準々決勝で敗れたものの、「大会の雰囲気を味わえてよかった」と、貴重な経験を積みました。東京2020オリンピックの出場権争いでも優位に立っています。

4歳でBMXに乗り始め、9歳のときに初の海外レースを経験した長迫選手は現在、スイスにある「ワールドサイクルセンター」に拠点を置き、日々各地を転戦しています。2019年10月11日(金)に有明アーバンスポーツパークで行われたテストイベント「READY STEADY TOKYOー自転車競技(BMXレーシング)」に出場するために、約10カ月ぶりに帰国しました。そのテストイベントでは準決勝で敗退。

テストイベントでは準決勝で敗退(993番が長迫選手)
テストイベントでは準決勝で敗退(993番が長迫選手)テストイベントでは準決勝で敗退(993番が長迫選手)

オリンピックに過去2人しか出場していないことからも分かるように、日本と世界(欧米)のレベルにはまだやや開きがあります。長迫選手はそれを認めつつ、こう指摘します。

「僕が思うに、まだ日本人で結果を出した人がいないので、自分たちの可能性を信じることができていないように感じます。練習では海外の選手とも同じくらいに走れるのに、本番のレースになったらそれができない。自分の可能性を自分でつぶしているんじゃないかと思います」

「自分にはベースパワーが足りていない」

同競技がオリンピックの正式種目となって以降、過去3大会の覇者はラトビアとアメリカから生まれています。自らのレベルを上げていくためには、そうした強い選手たちと切磋琢磨(せっさたくま)し、技術面はもちろん精神面の強化を図っていく必要があります。だからこそ長迫選手は海外で戦う重要性を説きます。

「いくら一番で走っていても最後に抜かれたら負けなので、そうした詰めの部分や、コーナーワークのライン取りなどは強い選手と戦わないと分からない。それは日本にいたら経験できないことなので、もっと海外に出ていくべきだなと感じます。個人個人ではなく日本全体でやっていく必要があると思っています」

海外で戦う重要性を説く長迫選手
海外で戦う重要性を説く長迫選手海外で戦う重要性を説く長迫選手

長迫選手自身も世界のトップで戦うために、足りないものがあると自覚しているそうです。

「自分にはベースパワーが足りていないんです」

長迫選手が言うベースパワーとは、例えばギア比。BMXはギアによる変速がないため、レース前に設定した後はそのギア比でしかこぐことができません。ギア比を重たくすれば1回こぐだけで多く進めますが、重いぶんパワーが必要になります。逆にギア比を軽くすれば、こぐ回数が増えるため、長いコースになると疲れが出てきます。どのギア比が自分に合い、それが世界で戦えるギア比なのか。そのベストなギア比を長迫選手は「まだ完全にはつかめていない」と言います。ただ裏を返せば、それをつかむことでレベルがもう一段上がる可能性もあり、競技者としての伸びしろととらえることもできそうです。

「競技の魅力を動画でも伝えられれば」

競技を普及させるため、長迫選手はユーチューブで映像を配信しています
競技を普及させるため、長迫選手はユーチューブで映像を配信しています競技を普及させるため、長迫選手はユーチューブで映像を配信しています

一方、オリンピックに出場した経験を持つ日本の第一人者として、長迫選手は自身のユーチューブチャンネルでBMXレーシングの映像を配信し、競技の普及にも努めています。

「正直、BMXレーシングというマイナーなスポーツが表に出ることは少ないんです。テレビでもそれほど取り扱ってもらえません。ただ、自分が発信することで何か変わるかもしれない。あとはカメラをつけていつも走っているのですが、日本の人たちに自分のライン取りや競技の雰囲気が少しでも伝わればいいなと。今は来年にオリンピックがあるから都内にコースができていますが、これまでは山の中など限られたところにしかなかった。それだと交通の便が悪いですよね。やっぱり生で見てもらう方が迫力も伝わるし、すごいなと思ってもらえます。そうした競技の魅力を動画でも伝えられればと思っています」

さらにBMXレーシングという競技の可能性についてもこう言及します。

「例えばジャンプ力や下半身の強さといったフィジカル面は、他の競技にも勝てるくらい強いはずなんです。ただ、BMXレーシングという競技の中で育ってきている選手たちは、それをあまり分かっていない。僕はリオデジャネイロ2016オリンピック後、(自転車の)トラック競技に挑戦しました。今はBMXレーシングに集中していますが、それはすごく良い経験でした。BMXレーシングをやっていたからトラック競技もできたと思うので、他の自転車競技に転向するという可能性も後進に広げていきたいです」

競技を普及させるには、多くの人が注目する舞台で結果を残すことが一番の近道です。まだ出場は決まっていませんが、東京2020オリンピックで目指すのはやはりメダル獲得。「ホームでの期待に応えたい」と語る姿には、第一人者としての決意が滲み出ていました。

東京2020オリンピックで目指すのはやはりメダル獲得
東京2020オリンピックで目指すのはやはりメダル獲得東京2020オリンピックで目指すのはやはりメダル獲得

自転車競技について

BMXはバイシクル・モトクロスのことで、オートバイのモトクロスの影響を受けてアメリカで誕生した競技。BMXレーシングは8メートルの高所にあるゲートから最大8人が一斉に坂を駆け下り、大きく起伏のあるコースで高々とジャンプを繰り返し、幾つかの傾斜の付いたコーナー(バーム)を抜けてフィニッシュを目指し、着順で順位が決まる。高いジャンプからの落下や接触などの危険がつきまとうため、フルフェイスヘルメットやゴーグルなど5種別中で最も多くの装備が必要だが、それだけにレースは迫力満点だ。

競技紹介

会場紹介