カヌー・カヤックフォアで東京2020大会内定 松下桃太郎選手の「読み」と「筋肉」に注目!?

「東京では自分がスプリント競技を有名にしたい」

カヤックフォアで東京2020オリンピック出場を内定させた松下桃太郎選手
カヤックフォアで東京2020オリンピック出場を内定させた松下桃太郎選手カヤックフォアで東京2020オリンピック出場を内定させた松下桃太郎選手

「カヌースプリントの魅力ですか? 何といっても筋肉ですね(笑)」

カヤックフォア(4人乗り)500メートルで東京2020オリンピック出場を内定させた松下桃太郎選手は、屈託ない笑顔でそう答えます。168センチと身長はそれほど高くないものの、筋骨隆々の体躯はそれを首肯させます。「でも自分なんて全然たいしたことなくて、世界の選手はもっとすごい。パワーもテクニックも全然足りていないので、頑張らないとダメですね」と、さらなる精進も誓っていました。

現在31歳の松下選手は、ロンドン2012オリンピックに出場した経験を持ちます。「口ではメダルを、と言っていましたが、そんなレベルでは全然なかった」と振り返るように、カヤックシングル200メートルでは11位、カヤックペア200メートルは10位に終わりました。続くリオデジャネイロ2016オリンピックでは松下選手も含め、日本人選手は誰もスプリント種目で出場枠を勝ち取れず。カヌースラロームのカナディアンシングルで銅メダルを獲得した羽根田卓也選手とは、対照的な結果となりました。

「彼とは同級生なんですよ。仲も良いし、小学生のときから知っています。昔は自分もスラロームをやっていたので、競り合うこともありました。そんな彼がメダルを獲得したので「おめでとう」と思う気持ちと同時に、少しの悔しさもありました。リオでは彼がスラロームを有名にしたので、東京では自分がスプリント競技を有名にしたいですね」

リオデジャネイロ2016オリンピックで銅メダルを獲得した羽根田卓也選手とは同級生
リオデジャネイロ2016オリンピックで銅メダルを獲得した羽根田卓也選手とは同級生リオデジャネイロ2016オリンピックで銅メダルを獲得した羽根田卓也選手とは同級生

チームの命運を握る役割も「楽だから選んだ感じです」

今回内定を得たカヤックフォアは、4人の力を結集させて順位を競います。誰か1人が頑張っても勝てるわけではありません。チームワークが求められるからこそ、個の力で海外選手に劣る日本にも勝機があると言えそうです。松下選手はチームの可能性について言及します。

「個人個人で戦ったら絶対に勝てないんですけれど、4人で力を合わせれば勝てる相手も増えてきます。オリンピック出場を決めたチームはだいたい世界チャンピオンが乗っています。ただ1人1人が強いので、そのぶんプライドが高い。「俺1人でもいける」という雰囲気を出しているんです。でも自分たちはレベルがそこまで高くない4人が乗っているので、みんなの力を合わせないと勝てない。だから仲良くやっていますし、そこまで個人が強くないぶんまだまだ伸びしろはあると思っています」

レース展開を読めるのも長年の競技経験の成せる業
レース展開を読めるのも長年の競技経験の成せる業レース展開を読めるのも長年の競技経験の成せる業

4人乗りの艇で、松下選手は前から2番目のポジションにつきます。レース展開を読みながら、スピードをどこで上げるかタイミングを常に見計らうのがその役割。相手との駆け引きもある中で、チームの状態や風などの環境面を見極めるのは、これまでの経験の成せる業です。まさに艇の命運を握る司令塔と言えるでしょう。ただ、そうした大役を担っていながら、松下選手はそのプレッシャーを微塵も感じていないようです。

「実は2番目が一番楽なんです。先頭の選手は肉体的にきつい。3番目と4番目は息もできないくらい水が飛んできます。フォアもやってほしいと言われたとき「2番目だったらいいよ」と。楽だから選んだという感じです(笑)」

名将の指導により、今も成長を実感

31歳となった現在も選手としての成長を感じているという松下選手。今年に入って日本代表のコーチにアレクサンドル・ニコノロフ氏が就任したことで、それを実感しているそうです。ニコノロフコーチは過去にイギリス代表を率いて、ロンドン2012オリンピック、リオデジャネイロ2016オリンピックの金メダリストを育て上げました。

「練習は量より質という感じで、1時間以内で全部終わります。何かを教えるのも最初の10分くらいです。あとは何も言わない。でもメニューの作り方や、競技への考え方などをきちんと言ってもらえるので、すごくやりやすいです」

練習時間が短くなったぶん内容は濃密で、集中して取り組むことが求められます。指導方法も、選手に自分たちで考えさせることが多いとのこと。松下選手も「言われるがままやるより、自分で考えてやるほうが自分のモノになると思うので、そちらの方がいい」と、現在の練習スタイルに手ごたえを感じているようです。

東京2020オリンピックで恩返しを誓う松下選手
東京2020オリンピックで恩返しを誓う松下選手東京2020オリンピックで恩返しを誓う松下選手

2大会ぶりに迎えるオリンピックで、松下選手は何を成し遂げたいのでしょうか。インタビューの最後にそう聞いてみました。

「運が良かったらメダルを取れるかもしれないですが、運ではダメなので、実力をつけてからそう言いたいです。だから今はメダルと言うより、小学校時代からナショナルチームに至るまでずっとお世話になっている(日本カヌー連盟の専務理事である)古谷利彦先生が頑張って作ってくれた東京2020オリンピックのコースで、自分たちが活躍して恩返しをしたいと思っています」

カヌー競技について

カヌーには、流れのない直線コースで一斉にスタートし、着順を競うスプリントと、激流を下りながら吊されたゲートを順に通過してタイムと技術を競うスラロームがある。

川や湖、またそれに似た屋外の人工のコースで行われるので、大自然と一体となる爽快感が最大の魅力だ。風を感じながら水上を疾走する気持ち良さを、観戦者もともに味わうことができる。

競技で使われるカヌーのタイプは2種類ある。ブレード(水かき)が片端だけについているパドルで行うカナディアンと、両端についているパドルで行うカヤック。さらにスプリントはシングル(1人乗り)、ペア(2人乗り)、フォア(4人乗り)の区別があり、距離も200m、500m、1,000mの3種類。

これらを組み合わせて男女でスプリントが計12種目、スラロームが4種目行われる。リオデジャネイロ2016大会までは、女子はカヤックのみで、男子より種目数も少なかったが、東京2020大会では女子にカナディアンが加わり、種目数も男女同数になる。

競技紹介

会場紹介