さくらジャパンを牽引する永井友理選手・葉月選手 「あまり仲良くなかった」姉妹の信頼関係

「妹の方がうまい」という姉の劣等感

さくらジャパンを牽引する永井友理選手(右)、永井葉月選手
さくらジャパンを牽引する永井友理選手(右)、永井葉月選手さくらジャパンを牽引する永井友理選手(右)、永井葉月選手

東京2020オリンピックでの躍進が期待されるホッケー女子日本代表「さくらジャパン」は、チームの中核を2人の姉妹が担っています。27歳の姉・永井友理選手はゴールを狙うエースストライカー、25歳の妹・永井葉月選手はゲームを組み立てる司令塔。2人の出来がチームの命運を左右すると言っても過言ではありません。

「妹の視野の広さはすごくて、他の人が狙わないところにパスを出してくれます。フォワード(FW)として、それは非常にやりやすいですね」と友理選手が語れば、葉月選手も「姉は勝たなければいけない大事な試合で必ずゴールを決めてくれます。本当に信頼できるFWですし、私のパスを取ってくれるのはだいたい姉なので、そういうところも尊敬しています」と、笑顔を見せます。

今でこそ強固な信頼関係で結ばれている2人ですが、昔からそうだったわけではありません。むしろ友理選手いわく「あまり仲が良くなかった」そうです。

友理選手はチームのエースストライカーとして重要なゴールを多く決めています
友理選手はチームのエースストライカーとして重要なゴールを多く決めています友理選手はチームのエースストライカーとして重要なゴールを多く決めています

両親も元ホッケー選手という環境で育った姉妹が、ホッケーを始めたのは必然でした。ただ、2人が同じ競技をやっていれば、周りから比べられるのもまた必定です。評価が高かったのはいつも妹の葉月選手でした。友理選手は当時をこう振り返ります。

「私は妹にけっこう劣等感を持っていました。ずっと比べられてきて、「妹の方がうまいね」と言われることがかなりあったんです」

一方で葉月選手は、比べられることについては特に何も感じていなかったそうで、「姉が私に強く当たってきたときは、「なんで?」と思っていました」と苦笑いを浮かべます。「でも姉の気持ちを考えると、それは仕方ないかなと受け止めていた部分はありました」と、理解を示していました。

2人の関係を変えた海外での経験

そんな2人の関係に変化が生まれたのは、友理選手が21歳のときにスペイン留学を経験したことです。海外の厳しい環境で選手としてもまれ、人間的にも成長を遂げたのでしょう。友理選手はこう語ります。

「海外に出てから「自分は自分なんだ」と再確認できたんです。いろいろな世界を見て、自分が身を置いている環境だけが全てではないなというのもすごく感じました。それもあって、妹に対しても、家族に対しての当たりもマイルドになったのかなと思います」

留学から帰国した友理選手の変化を葉月選手(写真)も感じ取っていたそうです
留学から帰国した友理選手の変化を葉月選手(写真)も感じ取っていたそうです留学から帰国した友理選手の変化を葉月選手(写真)も感じ取っていたそうです

葉月選手もその変化を感じ取ったそうで、「姉が留学先から帰ってきたとき、何か柔らかくなったというか雰囲気が変わったなというのはありました」と、当時を回顧します。加えて後に海外に出た葉月選手自身も、スペインやオランダでのプレーを経験したことで視野が広がったそうです。

「私も留学し、当初は周りの選手と比較して、足りないところはたくさんあるなと感じたのですが、自分にも良いところがあるんじゃないかと考えていました。それで「自分は自分」ということを意識したら、だんだんとプレーも良くなっていったんです。あとは自信を持って戦うことが大事でした。日本人の特徴としてシャイというのはあると思いますが、自分はとにかく海外で結果を残したいという気持ちだけで頑張ってきて、実際にゴールも決められるようになり、自信がついたというのは大きいです」

年齢を重ね、様々な世界を経験し、厳しい環境を乗り越えてきた2人の間に、もはやわだかまりは存在しませんでした。そしてプレーしているときは、「妹のことを妹と思っていない」(友理選手)、「姉のことを姉と思っていない」(葉月選手)と言うように、お互い姉妹という意識はなく、「いち選手」として最も信頼を寄せるパートナーになっています。

チームとしての武器を生かし、金メダルを目指す

東京2020オリンピックに向けては「自信と経験が大事」と語る葉月選手
東京2020オリンピックに向けては「自信と経験が大事」と語る葉月選手東京2020オリンピックに向けては「自信と経験が大事」と語る葉月選手

リオデジャネイロ2016オリンピックで、さくらジャパンは1分け4敗と不本意な結果に終わりました。葉月選手は後悔の念をにじませながら、こう振り返ります。

「本当に1勝もできなかったことがずっと悔しかったです。私たちは父が監督(永井祐司氏)だったこともあり、家族みたいな感じで行かせていただいたのに、結果を出せず、何もできなかった。自分としても思い切りできなかったですし、さくらジャパンの良いところを全然出せなかったんです。東京2020オリンピックに向けては、とにかく自信を持ってやること、あとは経験が大事になってくると思うので、これからの練習や試合で得たものをしっかりと大会につなげていきたいと思っています」

昨年はアジア王者に輝き、8月17日から行われていた東京2020オリンピックに向けたテストイベント「READY STEADY TOKYO - ホッケー」でも準優勝という成績を残しました。東京2020オリンピックでのチームの目標は金メダル。友理選手はさくらジャパンの武器をこう分析しています。

「外国人の足の速さやパワーとは違う、俊敏さや攻守の切り替えのスピードは日本の良いところですし、それは世界一を目指せる部分だと思います。そこを特に磨いて、ピッチでちゃんと表現できるようにやっていきたいと思います」

友理選手と葉月選手は前回大会の経験者ということもあり、チームを牽引する役割が求められます。姉妹で臨む2度目のオリンピックは、選手としても人間としても自らの成長を示す場になることでしょう。

前回大会の経験をチームに伝える役目も友理選手は担っています
前回大会の経験をチームに伝える役目も友理選手は担っています前回大会の経験をチームに伝える役目も友理選手は担っています

ホッケー競技について

縦91.4メートル、横55メートルのフィールド上で、ゴールキーパー1名を含む1チーム11名の選手からなる2チームが対戦し直径7.5cmのボールを相手チームが守るゴールへ入れて得点を競う球技。各15分の4クオーター制 (計60分)で実施され、より多く得点したチームが勝者となる。同点の場合は相手ゴールキーパーと攻撃選手の1対1の8秒間の攻防を行うシュートアウト戦により勝者を決定する。

ゴールキーパー以外は、手足でボールに触ることができず、スティックの片面のみでボールをコントロールする。スティックはカーボン製で長さは約90センチメートル。ボールは野球の硬球とほぼ同じ大きさ・重さのプラスチック製。

競技紹介

会場紹介