銀メダリストが「ベスト8」を目指す理由 アーチェリー古川高晴選手インタビュー

過去の成功体験により至った境地

国際大会では常にベスト8を目指しているという古川高晴選手
国際大会では常にベスト8を目指しているという古川高晴選手国際大会では常にベスト8を目指しているという古川高晴選手

「あまり面白くない答えかもしれませんが、僕は東京2020オリンピックでベスト8を目指しています」

そう語るのは、アーチェリーでアテネ2004オリンピックから4大会連続出場を果たしている古川高晴選手です。「ベスト8」という言葉に耳を疑ったのは、古川選手がロンドン2012オリンピックの銀メダリストだから。かの地で惜しくも届かなった頂点を東京で目指すのが自然な流れだと多くの人が考えるでしょう。しかし、古川選手はそんな周囲の期待にも自分のスタイルを崩しません。

「これは普段から僕が心掛けていること。国際大会で安定してベスト8に入るというのが僕の目標で、東京2020オリンピックだからメダルを、と思うと力んでしまうんです。だからそうではなく、オリンピックでも他の国際大会と同じ意識を持つことで、良い結果が付いてくるんじゃないかと思っています。まずはベスト8に入ることを目指し、そのあとは試合を楽しみたいと考えています」

こうした境地に至ったのは、過去の成功体験によるものです。北京2008オリンピックで、古川選手は「結果を残したい」という思いが空回りし、1回戦で敗退。その反省を生かし、ロンドン2012オリンピックではベスト8という目標を設定したところ、「リラックスして試合に臨めた」と言います。すると気づけば決勝戦にまで勝ち上がり、銀メダルを獲得しました。それ以来、国際大会では常にベスト8を目指して試合に臨んでいるそうです。

目指しているのは再現性の高いフォーム

目指しているのは再現性の高いフォーム
目指しているのは再現性の高いフォーム目指しているのは再現性の高いフォーム

今年8月で35歳になる古川選手は、4大会連続オリンピック出場、銀メダリストという実績が示すとおり、日本アーチェリー界の第一人者です。長年の競技経験で培った安定したフォームが強みで、今も自らが「日本で一番練習している」と力を込めます。古川選手が目指しているのは再現性の高いフォーム。

「再現性が高いというのは、つまり繰り返しやすいということ。どんなフォームであっても全く同じ動作ができれば、矢は同じところに飛んでいくはずです。ただ、それができないというのは毎回動きが違っているということですし、同じ動きを繰り返しやすいフォームこそが理想なので、それを身につけるためにたくさん練習をしています」

練習は毎日朝9時から夕方6時くらいまで。1日で400~450本の矢を射ちます。「シューティングラインを超えたときは集中していますが、それ以外ではリラックスしている」と言いますが、弓本体の重さは約2キロで、弦の張力は20キロほど。その負担が両腕にはかかっています。それが400本繰り返されることを考えれば、どれだけ集中力と体力が必要とされるかは容易に想像がつくでしょう。さらに付け加えると、ある程度の本数を射ったら、的から矢を引き抜くために、その場所まで歩きます。1日何度も往復するため、疲労も蓄積されていくはずです。それでも理想のフォームを手に入れるために、古川選手は自らと戦い続けています。

アーチェリーを見るときのポイントは!?

アーチェリーの見どころを解説する古川選手
アーチェリーの見どころを解説する古川選手アーチェリーの見どころを解説する古川選手

7月12日(金)から開催されていた東京2020オリンピックに向けたテストイベント「READY STEADY TOKYO-アーチェリー」に出場した古川選手は、1年後の本番会場で大会へのイメージを膨らませていました。

「これまで出たオリンピックでは、全て事前のテストイベントに出場しているのですが、やはり会場全体の雰囲気や、僕らにとって重要な風の吹き方を1年前から知ることができるので貴重な機会です。環境もすごく良いですし、射ちやすいと感じました」

アーチェリー選手にとって、いかに風の流れをつかめるかが勝敗にも直結してきます。風がない日というのはほとんどありません。そのため、風がどちらに向かって吹いているかを計算し、あえて左右に外すことで真ん中を狙うようにすることもあるそうです。

また、ランキングラウンド後のトーナメントは1対1で行われるため、相手の状況に惑わされず、自身に集中するメンタルの強さも重要になってきます。

いろいろ奥が深いアーチェリーというスポーツですが、見るときのポイントはどういうところなのでしょうか。そう問うと、「アーチェリーは95%がメンタルのスポーツ」と考えている古川選手らしい答えが返ってきました。

「他のスポーツと違って、じーっと動かず我慢し、体を少しだけ動かして弓を射つという競技なので、緊張しているときは手の震えが出てしまったり、視線が動いてしまうことがあります。ただ、強い選手というのは緊張していてもそれを表に出さず、10点を決めてもミスをしても表情を変えたりしない。選手の顔を見ているとそういうのがよく分かると思います」

競技紹介アニメーション「One Minute, One Sport」

アーチェリーのルールや見どころを1分間の手書きアニメーション動画でご紹介します。アーチェリーに詳しい人も、そうでない人も、まずは動画をチェック!